深みのある赤や、影の中に浮かぶような質感——。
薔薇を妖艶に仕上げたいときは、光を足すよりも“トーンを抑える”方向で整えるのが効果的です。
ここでは、Lightroomを使って落ち着いた印象の薔薇を仕上げるためのレタッチ工程を順を追って紹介します。
ベースの写真は自然光で撮影したもので、ここからトーン・彩度・光の流れを丁寧に調整していきます。
撮影時に意識しておきたいポイント
レタッチの前段階として、撮影時に次の点を意識しておくと、仕上げがスムーズになります。
①露出
ややアンダー目に設定して、花びらの質感を残す
②光
直射日光ではなく、柔らかい自然光を選ぶ
③構図
すっきりした背景、前ボケを活かしてアクセントをつける
これだけでも、後のレタッチでトーンが整いやすくなります。
撮影段階の詳しい設定や光の扱い方については、こちらの記事で解説しています。
今回はこちらの写真を落ち着いた妖艶なバラに仕上げていきます。

①基本補正でトーンの骨格を整える
レタッチの軸になる部分です。まずは露出と階調を調整し、全体の雰囲気を作ります。
露出を下げる
撮影時もややアンダーで撮っていましたが、Lightroom上でさらに調整。
明るさを抑えることで、花の輪郭が引き立ち、落ち着いた印象になります。
“闇の中に浮かぶ薔薇”をイメージしながら、少し沈ませるように。


黒レベルと白レベルを調整
黒レベルは暗い部分を中心に調整ができます。ハイライト部分のバラの露出は変えず、背景だけを暗くできます。逆に白レベルはバラの部分だけ調整がしやすくなります。
黒レベルを下げると、花びらの明るさや質感がより立体的に見えるようになり、
白レベルを上げることで薔薇の明るさだけがわずかに持ち上がります。


彩度を下げる
全体の彩度を落とし、華やかさよりも“儚さ”を演出。
赤みの強いピンクが落ち着いたトーンに変わり、深みのある大人びた印象になります。
彩度を下げすぎるとくすむため、色が残るギリギリのラインを狙うのがコツです。


②プロファイルを変更して全体のベーストーンを整える
基本補正を終えたら、プロファイルを変更して写真全体の雰囲気を整えます。
Lightroomのプロファイルは、写真の発色やコントラストを大きく左右する要素。作品に合うトーンが見つけてみましょう。
今回は、いくつかの候補を試した中でやや落ち着いた発色の”ビンテージ07″が一番しっくりきました。


③ポイントカーブで微調整
次に、トーンカーブで明暗の流れを微調整します。特定の場所の明るさを調整する場合、基本補正の項目よりトーンカーブの方が調整がしやすいです。
今回は、花びらの箇所だけもう少し明るくしたかったため、明るい部分だけを少し持ち上げ、暗部はそのままに。
こうすることで、全体のコントラストを強めずに立体感だけを加えられます。
花びらに柔らかな光が流れ、陰影が自然に繋がる印象になります。



④円形・線形フィルターで視線を導く
主題の薔薇へ自然に目が行くように、光を調整していきます。
線形フィルター
画面下や奥のエリアにかけて線形フィルターを使用し、背景の明るさをさらに抑えます。
花の後ろが静かに沈むことで、奥行きと空気感が生まれます。


円形フィルター
円形フィルターは、画面外からフィルターの端っこを被写体に軽く被せるのがコツ。
やや露光量を上げて主題に光が当たるよう、自然な範囲で調整していきます。



⑤仕上げの微調整
最後に全体を見渡して、トーンの流れと色の統一感を整えます。
ここまでで調整した項目のみ微調整しながら、
“深みのある静寂”と“薔薇の存在感”のバランスを取ります。


彼岸花に限らず、花をさらに綺麗撮るコツを知りたい方はこちらの人気記事もチェックしてみてください。
まとめ
撮影時に光をコントロールしておくことで、レタッチでは細かなトーン調整だけで完成度を高められます。
アンダー目の露出と落ち着いた彩度がベースになり、構図・カーブ・フィルターを通じて“静かな強さ”を持つ仕上がりに。
撮影と現像の両方でトーンを意識して、魅力的なバラを目指してみましょう。