彼岸花(曼珠沙華)は秋を象徴する花であり、その鮮烈な赤と独特の造形美から多くのカメラマンを魅了します。
しかし実際に撮影してみると
「赤が飽和してベタっとする」
「構図が難しい」
「どこにピントを合わせればいいのか分からない」
といった悩みを感じる人も多いでしょう。
ここでは初心者〜中級者が押さえておきたい撮影方法、レンズごとの切り取り方、設定のテクニックをまとめました。
彼岸花撮影の設定と表現テクニック
彼岸花を一輪で撮るときは、絞り開放よりもやや絞って被写界深度を深めにすると、花の造形をしっかり表現できます。F2.8〜F4だと背景は程よくボケながら、花の形は崩れずに残ります。
放射状に広がる花びら全体にピントを回したいときは、さらにF5.6前後まで絞るのも有効です。
彼岸花撮影の設定例(絞り優先モード)
撮影モード:絞り優先(A / Av)
▪️絞り:F2.2〜F4(背景をぼかす)、F5.6前後(花全体にピント)
▪️ISO:100〜400(明るさに応じてオートでもOK)
▪️シャッタースピード:自動設定に任せる (手ブレ防止ができればOK)
▪️露出補正:−0.3EV〜−0.7EVで赤の飽和を防ぐ
ちょっと暗めに撮ると彼岸花の赤がより映えます!
絞り優先モードなどモードダイアルの使い方はこちら!
モードダイアルの使い方
彼岸花撮影のピント合わせ
曼珠沙華は細い花びらが放射状に広がるため、どこにピントを置くかで印象が大きく変わります。
花びらに合わせれば造形美が強調され、雄しべ・めしべに合わせれば彼岸花らしい特徴が際立ちます。

群生を撮る場合も「主役を決めてそこに正確にピントを置く」ことで写真全体が引き締まります。

光を活かした曼珠沙華の撮影方法
日中の光も悪くはありませんが、赤をより鮮やかに見せたいなら朝日や夕日の逆光が効果的です。花びらが透けて輝き、立体感や透明感が増します。
曇天の日は赤が飽和しにくく、落ち着いた雰囲気で撮影できます。光の状況を見極めながら、その日の条件に合わせて表現を変えてみましょう。


レンズごとの彼岸花撮影テクニック
同じ被写体でもレンズの焦点距離によってアプローチが異なります。ここでは広角、標準、望遠レンズごとの切り取りのコツをご紹介します。
中望遠レンズで彼岸花を切り取る撮影方法
中望遠(85〜135mm前後)は群生の中から1輪を抜き出すのに最適です。背景を大きくぼかし、主役を際立たせる表現ができます。
撮影の際は、花と同じ高さに目線を合わせるのがポイントです。彼岸花特有の放射状の造形美をサイドから捉えられるため、立体感と迫力が増します。
また、開放F1.4やF1.8では被写界深度が浅すぎて花の一部しか写らないことがあります。そのため、少し絞ったF2.2〜F2.8あたりを使うと花全体の形を残しながら、背景をしっかりとぼかすことができます。

モード:絞り優先
▪️絞り:F2.8〜F4
▪️ISO:100〜400
▪️露出補正:−0.3〜−0.7EV
標準レンズで俯瞰する彼岸花の撮影方法
標準レンズ(35〜50mm)は歪みが少ないため、俯瞰撮影で彼岸花を真上からとらえるのに向いています。曼珠沙華特有の放射状の形を均等に写し、シンプルで美しい造形美を表現できます。
ポイントは、なるべく花が密集している場所を探すこと。群生のまとまりを俯瞰で切り取ると、赤い絨毯のような迫力ある構図が生まれます。
また、絞りをF8前後まで絞れば全体にピントが合い、群生の広がりをしっかりと描写できます。逆にF2.8付近で撮ると、一部の花だけが浮かび上がり、主役を際立たせた表現も可能です。

モード:絞り優先
▪️絞り:F5.6〜F8(花全体にピント)
▪️ISO:100〜400
▪️露出補正:±0〜−0.3EV
広角レンズで風景と一緒に撮る彼岸花の撮影方法
広角レンズは群生のスケール感を強調したいときに有効です。棚田や寺社の参道と組み合わせれば、曼珠沙華を単なる花ではなく「季節の風景」として切り取れます。
撮影のコツは、手前に大きく彼岸花を配置し、奥に神社や古民家などを入れること。広角特有のパース効果で、奥行きのあるダイナミックな写真に仕上がります。
また、夕焼けや朝焼けの空を取り込む構図にも広角レンズはぴったりです。低い位置から見上げるように構えると、空の広がりと彼岸花の赤が対比して印象的な一枚になります。
モード:絞り優先
▪️絞り:F8〜11
▪️ISO:100〜400
▪️露出補正:±0〜−0.3EV
この撮影テクニックは曼珠沙華に特化したものですが、花全般の構図や表現を深めたい方には、こちらの記事をぜひチェックしてみてください。
彼岸花撮影のマナーと注意点

近年は「少しでも近づいて撮りたい」という思いから、無理に群生に入って花を傷つけてしまう人が増えており、その結果、翌年には花が咲かなくなった例も報告されています。写真を残したい気持ちは誰しも同じですが、花や地域の方々の努力があってこその撮影環境だということを忘れてはいけません。
さらに注意したいのが、その地域で暮らす人々への配慮です。群生地の多くは住宅地や農地のそばにあり、撮影者が道路をふさいだり、生活の邪魔になる場所に立ち入ると、住民に大きな迷惑をかけてしまいます。撮影はあくまで「お借りしている場所」であることを意識しましょう。
お互い気持ちよく撮影して、翌年以降も美しい彼岸花を撮れるようにしましょう!
彼岸花をさらに魅力的に仕上げるレタッチ
撮影時に工夫しても、彼岸花の赤はどうしても飽和しやすいものです。
現像・レタッチで赤の階調を整えたり、色味を少し抑えるだけで、仕上がりがぐっと良くなります。
まとめ
彼岸花の撮影方法は、基礎を押さえたうえでレンズごとの切り取り方を工夫することで表現が大きく広がります。曼珠沙華は赤が飽和しやすいなど難しい点もありますが、テクニックを理解すれば圧倒的に美しい写真を残せます。
撮影の基本:絞りはF2.8〜F5.6で花の造形を活かす
ピントの置き方:花びらで造形美を、雄しべ・めしべで特徴を強調
光の活かし方:朝夕の逆光で鮮やかに、曇天はしっとり落ち着いた表現に
中望遠レンズ:花と同じ高さで切り取り、F2.2〜2.8で背景を大きくぼかす
標準レンズ:俯瞰構図で群生を表現、F8で全体にピント
広角レンズ:前景に花、背景に寺社や空を入れてダイナミックに
マナー:立ち入り禁止区域や三脚規制に注意し、花や観光客を傷めない
そのほか作例はこちらにまとめています。