写真・撮影テクニック

【風景写真が劇的に変わる!】マジックアワー×長秒露光で描くドラマチックな風景写真テクニック

夕焼けや朝焼けが空を染め、世界が一瞬だけ魔法にかかる「マジックアワー」。

この貴重なひとときを長秒露光と組み合わせることで、肉眼では捉えきれない幻想的な風景を写真に収めることができます。

本記事では、初心者でも簡単にチャレンジできる長秒露光の基本から、NDフィルターや三脚の活用法、撮影のコツまで徹底解説!

にゃんころ

長秒といえば滝やレーザー光線をイメージするけど、
風景に取り込むと素晴らしい景色が生まれます!

マジックアワーとは?

マジックアワー(Magic Hour)とは、日の出直後や日没直前の光が柔らかく拡散し、被写体が美しく照らされる時間帯のこと。

マジックアワーの魅力

・日の出・日没の前後20分に訪れる柔らかな光と鮮やかな
グラデーション
・空と大地、被写体すべてがドラマチックに変化する

長秒露光撮影とは?

長秒露光撮影(スローシャッター撮影)とは、シャッターを通常よりも長い時間(数秒から数分間)開けて光をカメラのセンサーに取り込む撮影技法です。これにより、目には見えない動きや時間の流れを映し出すことができます。

長秒露光でどんな写真が撮れる?

・水面や滝の水の流れをシルクのように滑らかに表現
・雲や星の動きを軌跡として写す
・車や街の光跡をドラマチックに描く

▪️撮影機材:α1 II / FE 16-35mm F2.8 GM II 
▪️撮影設定:F13 30秒 ISO100 焦点距離28mm

長秒露光撮影の基礎知識

長秒露光は「時間」をコントロールして、日常の風景をドラマチックに変える撮影方法です。

ここでは、必要な機材の準備からカメラ設定、NDフィルターの使い方まで、長秒露光の基本~実践までをわかりやすく説明します。

必須アイテムを知ろう

シャッターを数秒〜数分間開け続けるため、通常の撮影とは異なるアイテムが必要になります。ここでは、長秒露光を楽しむ上で揃えておきたい必須アイテムをわかりやすく解説します。

三脚

数秒〜数分もシャッターを開くため、その間に少しでもカメラが動くとブレて失敗写真になってしまいます。そのため三脚は必須です。

・初心者はまず「安定性」を重視
三脚の脚の太さ(パイプ径)は25mm前後自重1.5kg程度

NDフィルター

NDフィルターは、日中でも明るすぎて白飛びしてしまうのを防ぐための減光フィルターです。シャッタースピードを長く伸ばしても適正露出が保てるので、長秒露光撮影には欠かせません。

NDフィルター使用の目安

ND4〜32:数秒〜10秒前後の露光

ND1000:30秒前後の露光

ND1000+ND8やND32:3分などの長時間露光

私は ND8・ND32・ND1000の3種類をシーンに合わせて組み合わせながら撮影しています。

にゃんころ

ND1000ともう1枚あれば大体OKです!
円形でも角形でもどちらでも大丈夫!

レリーズ(あると便利)

三脚を使っても、シャッターボタンを直接押すと微妙な揺れでブレてしまうことがあります。
そこで、レリーズ(リモートシャッター)があると便利です。

レリーズがない場合はカメラのセルフタイマーで代用可能

カメラ設定と撮影テクニック

長秒露光撮影に挑戦するなら、まずはカメラ設定や撮影テクニックをしっかり理解しましょう。正しい設定をすれば難しくありません!ここでは、初心者にもわかりやすくポイントを解説します。

カメラ設定の基本

風景撮影の基本設定をベースに、次の点を特に意識して設定しましょう!

撮影モードマニュアル(M)モード
絞り(F値)F8〜16(風景全体にピントが合うように)
ISO感度100-400(ノイズを抑える)
ホワイトバランスRAW撮影時はオート
長秒時ノイズ低減オフ(撮影時間が長くなるのを回避)
手ぶれ補正オフ(三脚使用時は手ブレが逆効果に)

長秒露光撮影のテクニック

長秒露光では、シャッタースピードの秒数を決めることが最も重要です。被写体に応じて大まかな目安を覚え、必要なNDフィルターの濃さを選びましょう。

滝や流れる水をシルクのようにしたい約0.5秒〜3秒
湖面や海面をなめらかで鏡のようにしたい約20〜30秒
雲を流したい60秒〜200秒など長時間露光
にゃんころ

上記を参考に、次の通り設定していけば最高の1枚が撮れますよ!

まずは適正露出を調整する

三脚にカメラをしっかり設置し、構図を決めます。NDフィルターはまだ装着せずに、マニュアルモードの設定で適正な露出に調整します

この段階でピントもしっかり合わせておきましょう。NDフィルター装着後は、暗くなってピントが取りづらくなります。

NDフィルターを装着し、シャッタースピードを変える

NDフィルターをつけて、狙ったシャッタースピードになるよう調整します。どのくらいのNDフィルター濃度が必要かわからない場合は、「NiSi ND Calculator」などのツールを使って計算すると便利です。

例えば、<適正露出:ISO100 1/50秒 F8でシャッタースピード30秒にしたい場合>

①ND1000(10段減光)を使うと約20秒に。残りの10秒は絞りやISO、シャッタースピードで調整。

②シャッタースピードを1/40秒にし、露出補正+0.3に変更すると、ND1000装着時で約30秒となります。

この場合、絞りを1/3段暗く(F9へ)するとシャッタースピードが1/40秒に。ISOを1/3段明るく(ISO125へ)すると補正+0.3になります。
ND1000をつけることでシャッタースピード32秒にすることができます。

にゃんころ

難しく感じるかもしれませんが、やってるうちに
なんとなくわかってきますよ!

③撮影する

NDフィルターを付けると画面が暗くなり、ピントが合わせにくくなるため、必ずフィルター装着前にピントを合わせておき、撮影中はマニュアルフォーカスに切り替えてピントを固定しましょう。

風景写真に長秒露光を取り入れる(作例つき)

これまで紹介した長秒露光の知識やテクニックを実際の風景写真に活かして、幻想的で非現実的な表現を狙ってみましょう!

マジックアワーとの相性の良さ

光の変化が刻々と起こるこの時間帯に長秒露光を組み合わせることで、時間の流れまでもが写真に溶け込み、まるで絵画のような一枚を作り出すことができます。

空のグラデーションを滑らかに表現できる

・柔らかい光による幻想的なリフレクションを作り出す

・単なる風景写真から芸術写真へと昇華できる

▪️撮影機材:α7RV / FE 50-150mm F2 GM 
▪️撮影設定:F5 30秒 ISO100 焦点距離97mm

水面をなめらかに表現し、まるで雲のような質感を生み出しています。夕焼けの美しいグラデーションも重なり、幻想的な一枚に。
▪️撮影機材:α1 II / FE 50-150mm F2 GM 
▪️撮影設定:F10 132秒 ISO100 焦点距離50mm

約2分の長時間露光で水面をフラットにし、流木の存在感を際立たせています。
▪️撮影機材:α1 II / FE 24-70mm F2.8 GM II
▪️撮影設定:F9 30 ISO100 焦点距離24mm

水面の活用で幻想的な作品へ

波や流れをスローシャッターで滑らかにし、水面が鏡のように周囲の光景や空を映し出すことで、非日常的で幻想的な写真が撮れます。

・水面のざわめきが消えてフラットな輝きに変わる

・静かなリフレクションが広がることで空間の広がりを強調

・シルエットや前景を組み合わせてドラマチックな構図

▪️撮影機材:α1 II / FE 14mm F1.8 GM 
▪️撮影設定:F9 204秒 ISO100 焦点距離14mm
3分以上の長時間露光により、夕焼けのグラデーションを作り出しました。前景の枝のシルエットが奥行きを演出し、印象的な一枚へ。
▪️撮影機材:α1 II / FE 20-70mm F4 G
▪️撮影設定:F7.1 71秒 ISO100 焦点距離20mm
日の出直後の都市風景を、フラットになったリフレクションで幻想的な一枚に仕上げています。

雲を流してダイナミックに魅せる

流れる雲も1分ほどの長秒で撮影すると、美しい写真に仕上がります。

▪️撮影機材:α1 II / FE 16-35mm F2.8 GM II
▪️撮影設定:F10 163秒 ISO100 焦点距離16mm
雲の流れが遅かったので3分近い露光で動きを出しています。奥から雲が迫ってくるようなダイナミックな作品に。
▪️撮影機材:α1 II / FE 16-35mm F2.8 GM II
▪️撮影設定:F18 30秒 ISO100 焦点距離16mm
雲の速さによってシャッタースピードを調整すると◎
この時は速めだったので30秒で撮影しました。また、行き交う人の存在も消すことができます。
▪️撮影機材:α1 II / FE 16-35mm F2.8 GM II
▪️撮影設定:F16 201秒 ISO100 焦点距離16mm

まとめ

風景写真、特にマジックアワーや水面のある場面に長秒露光を取り入れることで、時間の流れや自然の動きを写真の中に閉じ込めた幻想的な作品が作れます。

これまでご紹介したテクニックやアイテムを元に、何度も挑戦してみてください。新しい風景写真の世界が広がるはずです。