春から秋にかけて、チューリップや紫陽花、コスモスなどさまざまな花を撮ってきました。
その中で最も印象に残ったのが、FE 135mm F1.8 GM(SEL135F18GM)です。
開放F1.8の浅い被写界深度で被写体が自然に浮かび上がり、中望遠らしい圧縮効果が生む奥行きのある描写。そして、撮っていて心地よい操作感。
この記事では、春〜秋の花を撮り続けて感じた135mm F1.8 GMの魅力を、実際の使用体験を交えて紹介します。
外観と基本スペック

FE 135mm F1.8 GMは、GMシリーズらしい高い質感と精密な操作感が特徴です。
手に取ると「撮る道具」としての完成度が伝わり、現場での信頼感があります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 焦点距離 | 135 mm |
| 開放F値 | F1.8 |
| 絞り羽根 | 11枚(円形絞り) |
| 最短撮影距離 | 0.7 m |
| 最大撮影倍率 | 0.25倍 |
| フィルター径 | 82 mm |
| 重量 | 約950 g |
花撮影では、最短撮影距離0.7 mの寄り性能が特に役立ちます。
中望遠ながら前ボケと背景ボケのバランスを調整しやすく、主題の花を立体的に見せられます。
外観
マットブラックの鏡筒にGMバッジが映えるデザイン。
フォーカスリングと絞りリングの操作感は安定しており、開放付近での微妙なピント合わせも思い通りに行えます。



ピントリングの使いやすさ
ピントリングは程よいトルク感で、MFでの微調整がしやすい設計です。
花の中心や花弁の一部など、狙った箇所にピントを置きたいときに扱いやすく、被写体との距離感を直感的に掴めます。
各種スイッチ類
鏡筒にはフォーカスリミッター、AF/MF切り替え、フォーカスホールドボタンを搭載。
花が密集している場所では、フォーカスリミッターを「近距離」側に設定しておくとAFが迷いにくく、テンポよく撮影できます。小さな花を狙う場面でも安定した動作が得られます。

花撮影に135mm F1.8がベストな理由
花との距離感が“ちょうどいい”
花撮影では距離の取り方がとても重要です。
70 mm前後では背景の情報が多く、200 mmでは圧縮されすぎて平面的になりやすい。
その中間にある135 mmは、主題と背景のバランスが自然で、花が浮き上がるような立体感を作りやすい焦点距離です。

▪️撮影設定:1/1000秒 F2.5 ISO100
F1.8が生む自然なボケと分離感
開放F1.8の浅い被写界深度は、主題の花をやわらかく際立たせます。
背景の花や草木を穏やかに溶かし込み、主題の輪郭を残して整理する。
ボケが騒がしくならず、落ち着いた印象の写真に仕上がります。

▪️撮影設定:1/640秒 F1.8 ISO100
同じ中望遠域のFE 70-200 mm F2.8 GM IIでも花を撮ってきましたが、135 mm F1.8 GMのほうが主題が浮き上がる感覚が強いです。F1.8とF2.8の差は数字以上に印象が違い、背景の距離感と花びらの立体感が大きく変わります。
解像力と柔らかさのバランス
FE 135mm F1.8 GMは、開放から非常に高い解像力を発揮します。
ピント面の花びらの細部まで精密に描きながら、そこから背景へとボケていく流れがとても滑らかです。

▪️撮影設定:1/200秒 F3.2 ISO100
ボケが急に始まるのではなく、ピントが合った部分から徐々に溶けていくようなグラデーション。その自然な移行が、花を立体的に見せてくれます。
高画素機(α7R Vなど)との組み合わせでは、花粉や花弁の繊細な質感まで自然に再現できます。
光とトーンによる表現の幅
FE 135mm F1.8 GMは、露出を抑えたダークトーンの被写体でも階調をしっかり保ちます。
バラのように質感のある花をアンダー気味に撮ると、花びらの陰影が立体的に浮かび、落ち着いたトーンで描かれます。

▪️撮影設定:1/800秒 F3.2 ISO100
主題だけに露出を合わせると、静かで印象的な一枚に仕上がります。
光を抑えた撮影でも、細部の描写力と自然なコントラストを失わないのがこのレンズの魅力です。
春〜秋の花で感じた描写の違い
・春のネモフィラ
淡い青のネモフィラは、F1.8のボケを活かすと幻想的に写ります。
前景を大きくぼかすことで、主題の花だけがふわりと浮かび上がり、春の光を包み込むような優しいトーンになります。

▪️撮影設定:1/3200秒 F1.8 ISO100
・夏のレンゲショウマ
枝や蕾が密集するレンゲショウマは、背景処理が難しい被写体。
中望遠の画角で余分な要素を避け、花だけを自然に切り取れます。
F1.8の浅い被写界深度で背景をぼかすと、森の中に咲く花が静かに浮かび上がります。

▪️撮影設定:1/250秒 F2.2 ISO100
・秋のコスモス
開放F1.8で前ボケと背景ボケを重ねると、群生の中の一輪を自然に引き出せます。
前景の花の色が柔らかく溶け込み、主題が浮かび上がる印象に。

▪️撮影設定:1/1600秒 F1.8 ISO100
撮影する季節や花の形によって、絞りをわずかに変えるだけで描写の印象が変化します。
これが春から秋にかけて135 mmを使い続けて感じた面白さです。
ズームレンズでは得られない“撮る感覚”

FE 70-200 mm F2.8 GM IIは優秀なズームレンズですが、135 mm F1.8 GMで花を撮るときの楽しさは別のものです。
ズームではフレーミングをレンズ側で調整しますが、単焦点では自分が動いて距離を探す。その過程で光の角度や背景を意識するようになり、一枚ごとの集中度が上がります。
135 mmは、花と自分の距離を固定したうえで“光をどう入れるか”を考えるレンズ。
作品づくりの感覚に近い撮影体験が得られます。
花撮影でのおすすめ設定とシーン
▪️絞り:F1.8〜F2.5(背景を整理し主題を分離)
▪️ISO:100〜400(低ノイズで花の質感を保つ)
▪️シャッタースピード:1/100以上(手ブレと被写体ブレを意識)
▪️フォーカスモード:AF-C(花の動きに対応)
▪️WB:晴天または曇天(花の色味に合わせて調整)
撮影シーンは、逆光で花びらが透ける時間帯や、曇りの日の柔らかい光が最も相性が良いです。手前に花を入れて前ボケを作ると、写真全体の奥行きが増します。
実際に試してみるなら
FE 135mm F1.8 GMは、撮っていて“写りの気持ちよさ”を実感できるレンズです。
ボケのつながりやピント面の立体感は、実際にファインダーを覗くとよく分かります。
購入を迷っている人は、まずレンタルで数日試してみるのもおすすめです。

まとめ|花を主題として撮るなら、FE 135 mm F1.8 GMが最適

春から秋にかけて花を撮り続けて感じたのは、
135 mm F1.8 GMが「主題を際立たせる」ことに特化したレンズだということです。
ズームのような柔軟性はありませんが、被写体との距離を決めて構図を作ることで、
写真の意図と密度が明確になります。
花を“綺麗に撮る”ではなく、“どう見せたいか”を考え始めたとき、このレンズの良さがはっきり見えてきます。



