滝の流れが絹のように見えたり、夜の街で車の光が一本の軌跡になったり。
「長秒露光」は、肉眼では見えない時間の流れを写真に写し取る特別なテクニックです。
僕自身も、長秒露光を取り入れてから写真の表現が一気に広がりました。普通に撮るのでは残せない雰囲気を写せるので、風景撮影がもっと楽しくなります。
この記事では「長秒露光とは何か」から、実際の撮影方法、昼間に使うNDフィルター、30秒以上の撮影方法、ノイズ対策や作例まで、体験談も交えて徹底解説します。
長秒露光とは?

長秒露光とは、シャッタースピードを数秒〜数分に設定して撮影する方法です。
通常の1/100秒前後では止まって写るものが、長秒露光では「流れる」「溶ける」「残像が線になる」といった独特の表現に変わります。

長秒露光で撮れる写真の作例
長秒露光はシーンごとにまったく違う表現を生みます。
▪️滝や川 … 流れる水が絹の布のように柔らかく写る
▪️夜景 … 車のライトが一本の光跡となり、街全体が動いているように見える
▪️雲や海 … ざわついた波や雲が、幻想的で滑らかな質感に変わる
▪️星景 … 星の軌跡や天の川をダイナミックに描ける
どれも肉眼では見られない世界。だからこそ、撮ってみると普通の風景がワンランク上の写真に感じられるはず!




長秒露光を取り入れると、こんな感じの写真が撮れるようになりますよ!
長秒露光に必要な機材

僕が普段使っている必須アイテムはこの3つです。
▪️三脚
これは絶対必須。ブレたら一発で失敗。
▪️NDフィルター
昼間に撮るなら必須。これがないとシャッターを長く開けられません。
▪️リモートレリーズ or 2秒セルフタイマー
シャッターを押すときの振動を避けられるので安心です。
三脚とNDフィルターさえあれば、ほとんどのシーンで挑戦できます!
昼間と夜間の撮影方法
昼と夜で撮影の方法が異なります。違いを把握しておきましょう!
▪️夜間(夜景・星空)
夜は光量が少ないので、NDフィルターなしでも数秒〜数十秒の露光が可能です。街灯や車のライトを活かしてドラマチックに写せます。
▪️昼間(滝・海・雲)
昼間は明るすぎるので、NDフィルターが必要です。僕はND8とND1000の2枚重ねをよく使います。例えば1/30秒で適正露出になるシーンをND1000で撮ると、約30秒まで伸ばせます。
この後に、シーン毎の目安秒数、NDフィルターの使い方や、撮影の流れを説明していきますね!
シーンごとの長秒露光・目安シャッタースピード
僕自身がよく撮っていて「これくらいがちょうどいい」と感じている目安をまとめました。まずはこのあたりから試すと失敗が少ないですよ!
シーン | 目安シャッタースピード | 設定例(秒 / F値 / ISO / フィルター) | ポイント |
---|---|---|---|
滝・川の流れ | 0.5〜1秒 | 1秒 / F8 / ISO100 / ND8 | 水が柔らかく流れる。長すぎると白く潰れるので1秒前後が自然。 |
車の光跡(夜景) | 5〜10秒 | 8秒 / F11 / ISO100 / フィルターなし | ライトが線になり、都市の躍動感を表現。F値を絞ると光条も出る。 |
リフレクション(水面) | 20〜30秒 | 25秒 / F8 / ISO100 / ND64 | 水面の揺れが消えて鏡のように。風がある日は特に長めが効果的。 |
雲の流れ | 60〜180秒 | 120秒 / F11 / ISO100 / ND1000以上 | 雲全体が動いて幻想的に。3分程度かけると肉眼では見えない世界に。 |
特に2分前後の長時間露光をすると、現実とは思えないような作品が出来上がります!


どちらも北海道の支笏湖です。早朝の時間に132秒の長秒露光で撮影しました。
非現実的な写真ができるのが長秒露光の魅力です!
NDフィルターと露光時間の計算

「リフレクションは20〜30秒が目安」とか「雲は60秒以上」と聞いても、
『え、でもカメラの設定にはそんな秒数出てこないんだけど?』
って思いませんか?
そこで必要になるのが NDフィルター。
光の量だけを減らすフィルターです。「光をどれくらい減らすか」を段数で表していて、それによってシャッタースピードを何倍に伸ばせるかが決まります。
NDフィルターについてもっと知りたい方はこちら!
→NDフィルターの基本
例えば・・
1/30秒(フィルターなしの適正露出)
→ ND1000をつけると 約30秒 に。
最初は「計算難しそう…」と思うかもしれませんが、僕自身はスマホアプリで一発変換しています。
詳しくはこちらの記事でチェックしてみてください!
アプリでの計算方法
慣れてくれば「この明るさならND64くらい」と感覚で選べるようになるので大丈夫です。
長秒露光の撮影手順(実際の流れ)

じゃあ、現場ではどう動けばいいのか?
僕がいつも滝や夜景を撮るときにやっている手順を紹介します。
- 構図を決める
三脚にカメラをセットして画角を決める。 - 手ぶれ補正オフ、長秒時ノイズ低減オフ
- NDは使わず、適正露出に合わせる
マニュアルモード
F値は8〜11あたり
ISO100
シャッタースピードで適正露出にする - ピントを合わせる
NDフィルターをつける前にAFでピント → MFに切り替え。 - カメラ設定を整える
「シーン目安表+ND計算」に従ってシャッタースピードを計算 - NDフィルターを装着(昼間の場合)
NDを装着して希望のシャッタースピードに合わせる
装着後は画面が暗くなるので、必ずピントは先に合わせる。 - リモート or 2秒セルフでシャッター
手で押すとブレるので必ず使う。
夜景撮影の場合は、③の段階で8秒くらいのシャッタースピードになると思うので、NDは不要です!(露出を合わせてピントを合わせたら、MFにしてレリーズで撮影しましょう!)
一般的な風景を撮るのと設定はほぼ同じです。シャッタースピードだけ計算して、それにあったNDを装着すればOK!慣れてしまえば全く難しくないですよ
30秒以上撮る方法(BULBモード)
カメラの通常設定は30秒まで。
それ以上撮りたいときは「BULBモード」に切り替えて、リモートレリーズでシャッターを押しっぱなしにします。
自分の好きなタイミングでシャッターを閉じることができるモードです。
機種によって、メインダイアル上で選べたり、シャッタースピードダイアルを回し続けると出てきたりと様々です。
雲に動きを出したいときや、海を数分かけて滑らかにしたいときはこの方法を使います。

▪️撮影設定:F8 201秒 ISO100 焦点距離21mm
2分半露光で、雲に動きが出て川面はフラットにしています。
長秒露光で出やすいノイズと対策
「長秒露光ってノイズが増えるんじゃない?」と不安な方もちらほら
結論から言うと、全く気にしなくてOKです。
いつも「ノイズリダクション」や「長秒時ノイズ低減」をOFFにしていますが、ノイズが目立つことはありません。
逆にONにすると30秒撮った後にさらに30秒待たされるので、撮影テンポが悪くなります。(シャッターを切った秒数分待たされます)
唯一気になるのは星景写真。
星を撮るときはISO3200以上になりやすいので、ノイズがどうしても目立ちます。そういうときはRAWで撮って、LightroomやDxOなどの現像ソフトで後処理しています。
長秒露光の実践Tips
特に注意しておくべきポイントが3つあります。
▪️ピントはNDフィルターをつける前に合わせる
▪️絞りすぎは画質が落ちるので注意(回折現象)
▪️ISOはできるだけ100固定(絞る必要があればISOを上げてカバー)
この3つを押さえるだけで、失敗がぐっと減りますよ!
まとめ
長秒露光は「時間を写す」という特別な表現方法です。
僕自身も、最初に滝を撮ったときの衝撃でハマり、その後はマジックアワーへと表現が広がりました。
三脚とNDフィルターさえあれば誰でも挑戦できるので、ぜひ一度試してみてください。
普段の風景が一気に作品へと変わる体験になるはずです!